ダレン・ブラウンのザ・プッシュ 心理誘導で人に殺人を唆す実験

このツイートがTLに出てきたんで興味を持って前から探してた。

Netflixで莫大な資金と人を使ってセット組んで普通の市民を騙してちょっとずつ暗示をかけて命令を聞くようにして最後に殺人をやらせるって番組を見た。何人かは本当に人を突き落として殺す事を選択した(勿論ロープで助かる)。こんなの日本じゃ絶対できない。いろんな意味ですげーな……
https://twitter.com/abfly/status/969032891488350208

やっと見つけたのは「ダレン・ブラウンのザ・プッシュ」という番組。
1時間くらいのドキュメンタリーだった。
でもカテゴリは「海外リアリティ・バラエティ」なので、見つけるのが遅れた。
てっきりドキュメンタリーだと思って……。

内容は、ツイートの通り。
巧みに心理誘導して、最後に高所にいる人を突き落とすよう殺人教唆するっていう実験。

でも「バラエティ」なんで、わかってて参加した役者かなと疑ってしまう……。
とは言え、騙す為にリアルな死体人形を用意したり、手が込んでる。
これもツイートの通り、かなりの金がかかってる。
Netflixオリジナルだけど、やっぱりNetflixって儲かってんだねえってのが初めの感想w
ここまで金かけて、こんな人の生き死にをテーマにした実験なんて、よくやれるなあ……とも思う。

仕掛け人は「ダレン・ブラウン」というメンタリスト
イギリスでは有名で、ペテンとか詐欺師とかの疑惑もあるようです。
あのDAIGOが憧れている人とも。
合間合間にダレンの解説が入って、かなり細かく心理誘導してるんだなあと。
なのでペテンってのは誤解かと思います。

実験の本質は「社会的追従の実験」で、社会的な圧力を受けると人は殺人を犯すかというもの。
でも、実際には偽のチャリティオークション参加者数人とダレン・ブラウンによる圧力に過ぎないので、
これを社会からの圧力とみなすのはどうなんだろう……。
とは言え、ターゲットはそれでも苦悩して葛藤してた。
仕掛け人は社会的地位のある人に成り済ましていたので、
これも社会的圧力という解釈でいいんですかね。

冒頭では「警官を装って誘拐事件の協力をして欲しい」と嘘をついて、
カフェショップの赤ん坊を誘拐させる、という別の実験があるんですが、
これは警察という社会的圧力の象徴を利用してるので「社会的追従」に該当するとわかります。
ただしダイジェスト的で過去の番組の一部なのか、ちょっとわかりません。

でも、人を突き落とす実験については、そういう社会的権威は使ってないので、どうかなと……。
ただ、偽のチャリティオークション自体はイギリスの有名人もビデオメッセージを提供して、信憑性を高めてはいます。
これが偽のオークションとは気付きにくいだろうな、という金がかかってそうな感じ。

参加者は人選の段階で「社会的追従」傾向が高い人を選んでます。
それは「ベルの音が鳴ったら立ったり座ったりを繰り返す」というもの。
でも、人選の段階で「そういうことをしろ」とは言われてないので、
仕掛け人が立ったり座ったりするのを見て、自発的に同じ事をする人を選ぶわけです。
周りを見て同じ事をしない人は排除されてました。

最終的に残ったのはハンナ、ローラ、マーティン、クリスの4人。
とりわけクリスはアプリ開発会社社長で、
チャリティーオークションの宣伝用アプリの開発を請け負ってるので、
余計に責任があって断りにくい立場でした。

心理誘導の手法はフット・イン・ザ・ドアー・テクニック
つまり、初めは簡単に引き受けやすい罪の意識が微小な事をやらせつつ、徐々にエスカレートするっていう手法。

それから一貫性の法則
フット・イン・ザ・ドアー・テクニック自体が一貫性の法則の一種とも言えます。
一度ある何かを受け入れると、一貫性を保とうとして、同じ人の要求を続けて引き受けてしまうという心理誘導の手法です。
最終的には殺人隠蔽の共犯者になるよう引きずり込まれます

あとドレスコードをわざと教えなかったせいで、
自分を格下のように感じるという心理も。
格下のように感じているので、頼み事を受け入れやすいと。

偶然名字が同じだったという、親しさを感じさせる心理も使ってました。

「ここで怪しまれると、その後の心理誘導も不可能になる」という最大の仕掛けは、
チャリティーオークションの出資者バーニーが心臓麻痺で死ぬって所。
この辺、プロの役者がやってたようで、迫真の演技。
緊迫感から言って、これは騙されるよなあ……と。
しかも後でわかるけど、死体は金をかけて作った本物そっくりの人形で、
触った感触も人間そっくりのものらしいです。

で、チャリティーの主催者はバーニーの死を誤魔化そうとします
出資者が死ぬと出資の話もなかった事になるからです。
この時点でクリスはもう「一貫性の法則」で疑わずに協力してしまいます。
主催者は救急車を呼んでないのだから、クリス自身が電話してもいいはず。
でも事前に会社の同僚の協力で、クリスのスマホを貸し出してしまってるのと、
この場合は「主催者に協力する」という一貫性を、無意識に守ろうとしてしまい、
自分で救急車を呼ぶという行動を起こそうとしない
しかも表向きは「子ども達の為のチャリティを成功させねばならない」という
逆らいがたい大義名分があるのも大きい。

更にクリスは関係者から出資者のバーニーと間違われて、
話を合わせるよう求められてしまい、
動揺しつつも同意してしまう。
でも上手いこと嘘をつけるか不安な訳で、
主催者に助けを請う為にますます追従的になります
「オークション参加者が見知らぬ人ばかり」という状況も、追従性を高めるそうです。

クリスはバーニーに成り済まして演説を成功させたのち、
死体を本人の車に戻して車内で発作が起きたように偽装する事を求められます。
そこで、車椅子に死体を乗せて運ぶのだけど、
都合良くスマホに着信がかかり、
ポケットから取り出すのに片腕を上げる必要があり、
その腕がオークションで落札の意思のある合図と誤解されてしまうのはどうなのかとw
ちょっと笑ってしまった。

駐車場に運ぶ際に酔っ払いに絡まれるのだけど、
その死体があまりにもピクリともしないので、ここで解説が入ります。
それは本物にそっくりの死体人形を作る為に、
役者本人の体から石膏で型を取って精度を高めたものだったという種明かし。
体内に骨に相当する硬いパーツも入れてました。
ダレン・ブラウンのザ・プッシュ
製作には2ヶ月もかかったそうです。
正直「ここまでやるか……」と思います。

駐車場には本人の車がなかったと主催者が慌てて戻って来ますが、
急遽計画を変更して、階段の下に死体を置いて転げ落ちたように見せかけます。
それからロビーに戻るとバーニーの奥さんと遭遇。
一難去ってまた一難っぷりに、笑ってしまった。
奥さんが言うには、実はバーニーは仮死状態になる持病があると。
薬を飲めば目覚めるんだと主張。
これでクリスは安堵し、その場にいた関係者に事情を打ち明けます。
しかし放置したはずのバーニーは消えていて、
いつの間にか屋上にいて、事実を暴露すると大声で騒ぎます。

バーニーに訴えられると団体はお終い。
そこで関係者は共謀してバーニーを屋上から突き落とすよう懇願。
最終的にクリスは殺人教唆を拒否して立ち去ります。
そこでダレン・ブラウンが登場してネタばらし。

人選したのは「周囲に同調しやすい人」とは言えども、
参加者は社会実験に協力する人をSNSで募集して選ばれた人で、
元から「何か社会的に役に立つ事をしたい」と思ってた人達
なので、良心を備えている可能性が高い。
だから、クリスは最終的に殺人を躊躇したのかなと思います。

ただ、実験では突き落とした人もいます。
突き落とした人はバーニーの死を偽装する為に、死体のお腹を蹴ってます。
これもフット・イン・ザ・ドアー・テクニックでしょうね。
クリスはさすがに蹴るのは拒否してました。
なので、最後の場面で踏みとどまれたんでしょうね。

案外、日常的にもこうやってハメられて起きた事件ってあるんじゃないですかね……。
「どうしてあの人が」的な事件の実態って、
頭のいいサイコパスが心理誘導してるのかもなあって印象が残りました。
その意味では不気味な番組ですね。

ただ、突き落とした人は名前も顔も出てるんですよね。
番組配信後に方々から悪口を言われそうな……。
それでも名前と顔を出すことに同意してるのは不可解な気はするので、
ターゲット自体も役者なのかなという疑いも残りました。

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