(書評)良心を持たない人たち

「良心を持たない人たち」はサイコパス関連本で有名な本のひとつです。
25人に1人がサイコパスだと主張しています。
ただし東洋では0.03%~0.14%程度とのこと。
私は非犯罪的サイコパスはもっと多いと感じているのでこの低すぎる数値には納得しませんが、ここは書評なので措きます。


原題は「The Sociopath Next door」なのでソシオパスについての解説しているのですが、
この本で言うソシオパスはサイコパスも含むと思います。
サイコパスは遺伝的なもので、ソシオパスは後天的なものと区別するようですが、この本では両者の区別はありません。
どういう原因にせよ結果的に同じようなパーソナリティになるのだし、
どっちだろうがこの本の主旨としては、サイコパスやソシオパスに当てはまる特徴の解説と見極め方を教えたいだけなのだから、どうでも良いことでしょう。

この本では「良心を持たない人」の特徴として、以下の項目をあげています。

・一見、魅力的でカリスマ性がある
・嘘をついて人を操る
・空涙で同情を引く
・追い詰められると逆ギレする
・自分にしか関心がなく、退屈しがち
・刺激を求めて支配ゲームに走る
・人に依存したがる
・近視眼的で世間知らず

上記を踏まえて、以下の人物をサンプルにしたサイコパスのケーススタディをしてます。

・資産家の息子で、とある会社の取締役になったあと、気に入らない秘書の腕を折って告訴された男スキップ
・全国の郵便局から切手を盗んでは大騒ぎする様子を眺めて楽しんでいたスタンプマン
・患者に嘘を付いて傷つけ、主治医との信頼関係を損なわせる偽心理学者ドリーン
・男と付き合ったことの無い女性をたらしこんで結婚し、自分をかわいそうな人と思わせて働きもしないで寄生しつづけるルーク
・ヘロインの密売に関わっていたせいで麻薬患者に自宅に侵入されて射殺し、懲役10年となった高校校長

このうちスキップ、ドリーン、高校校長は社会的に成功したサイコパス。
ルークは一見サイコパスには見えないんですが、実は自分をかわいそうな人に見せて寄生的な生活を続けているサイコパス。
これらのサイコパスに共通する特徴として「人を支配したい(勝ちたい)」という願望があると指摘しています。
支配とは何も相手を殺したりせずとも、誘惑して相手の心を操ったり、子どもを道具のように扱ったり、何かを盗んで騒ぎを起こしたり、銀行口座を空にして行方をくらませたり、その手法は様々で暴力的な手段を取るのはむしろ稀とのこと。

サイコパスは外見的には魅力的だったり普通の顔をしているので、外見から見抜こうとするのは困難。
そこでサイコパスの見抜き方とし、よく使う手口「魅力」と「同情」をあげてます。
偽心理学者ドリーンは性的関係を利用して、精神病棟の権威者を操っていました。
ルークは自分をかわいそうな人と思わせて妻に寄生していました。
またサイコパスは追い詰められると「空涙」で窮地を切り抜けようとします。
よって、サイコパスを見極める最も有効な手がかりは「泣き落とし」だと主張しています。

著者はある収監中の詐欺師に欲しい物を尋ねたことがあるそうですが、その返答は「他の人から哀れんでもらこと」だったそうです。

あるサイコパス男は妻に暴力を振るった後、キッチンに座って頭を抱え込んで「俺は情けないやつだ」と悩んで見せます。
すると殴られた妻は、夫を許してあげなければならないように感じてしまうのです。
上記のスキップは秘書の腕を折っておきながら自分の方こそ同情されるべきだとほのめかし、
ドリーンは自分を患者を見るのに忙しくて患者の苦しみをみてあげられない繊細な神経の持ち主だと見せかけてます。
人に依存するタイプのサイコパスであるルークについても、
繰り返し悪事を働く者が同情を買おうとしたら警戒を要する」と、わざわざ太字にして強調してます。

また以下の13の対サイコパスへの心構えを説いています。

・この世には良心を持たない人がいるという事実を受け入れる
・相手の肩書や権威と自分の直感がずれていたら、直感を信じる
・3回裏切った相手を受け入れない
・権威を疑う
・調子のいい言葉を疑う
・尊敬と恐怖心を取り違えない
・サイコパスのゲームに乗らない
・サイコパスからのいかなる連絡も断つこと
・人に同情しやすい自分の性格に疑問を持つこと
・治らないものを治そうとはしない
・同情であれ、どんな理由であれ、サイコパスが素顔を隠す手伝いをしてはいけない
・自分の心を守ること
・幸せに生きることが最高の報復となる

補足ですが、要所に挟まれている良心とはなにかという話として、
スタンレー・ミルグラムの電撃実験から、
普通の人も権威による強制があると容易に良心を減じさせるという話もしてますが、
これは本筋(隣のサイコパス)とはあまり関係が無い話。
ただしこれは、ソシオパスがいかにして生まれるかという話にもつながります。
しかし本書ではそこまでの話はしていません。

一方、サイコパスは遺伝的なものだと示唆する話はしています。
それは双子の遺伝率の研究結果としてサイコパス傾向を持つ性格確率は、二卵性双生児よりも一卵性双生児の方が2倍以上高かったこと。
また「里親プロジェクト」で500人の里子の追跡調査を行い、サイコパス傾向を持つ里子は里親よりも実の親との方が強い共通性があったとのこと。

良心をもたない人たち (草思社文庫)

コメントは受け付けていません。