衒学的で読みづらいという評は知ってたけど、有名なミステリらしいので読んでみた。
たしかに、ヨーロッパの絵画や美術品や稀覯本、宗教逸話とかの話題がすごく多い。
ほぼ全部知らないので、正直言って読むのがうんざりだった。(^_^;)
ググって調べようとしたけど、数が多くて面倒くさくってやめた。
探偵役の「法水」は、それらの知識を真犯人を探す心理洞察の為に散りばめているけど、初見だとどれが伏線に相当するのかとても判断できない。
会話内容から犯人の心理を見抜くっていう意味では、刑事コロンボに似てる。
でもコロンボはわかりやすいのに対して、黒死館は知識が無いと言い間違えてるのかさっぱりわからない。
実際の法水の推理は、何度も外れて二転三転する。
完全に的外れではなく、ある程度は合ってるけど真相をズバリと見抜いたわけではなく、新事実発覚などで何度も推理しなおしてる。
犯人をあぶり出すために意図的にウソをついて人を追い詰めるくだりもあるけど、正当な推理とまったく区別がつかない。後出しジャンケンで誤魔化してる?とも思えた。
そういう怪しげな捜査方法なので、探偵役が実は犯人っていうパターンじゃないの?と疑いつつ読んでたけど、違った。
真犯人は、あたかも誰かを庇って証言を控えてるような態度だし、法水も真犯人を見抜けずに同情的だったから、まさかこいつが真犯人だったの?と驚いた。
最後まで読んでも、真犯人の犯行動機がさっぱりわからない。遺伝的な犯罪者ってことらしいけど。
ただ、黒死館を作った算哲は犯罪者の遺伝性を否定する実験の為に館とその住人を住まわせたわけだけど、遺伝的犯罪者が真犯人だったことで算哲の考えは間違っていたことになる、という皮肉なオチは面白い。
物語の筋だけなら、犯人候補が変わっていくどんでん返しは面白い。
でもそれは、多種多様な「教養」に紛れているので、初見では筋を追うのだけでも大変だった。
ドグラ・マグラに並ぶ日本三大奇書って評価らしいけど、衒学的で読みづらいミステリって感じなだけで、奇書ってほどでは無いと思う。
黒死館殺人事件 (河出文庫)

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