たったひとつの冴えたやりかた

 
SF

3編の短篇集。
どれも「自己犠牲」的な物語。


第1話「たったひとつの冴えたやりかた」が有名で、兄がいる宇宙の辺境へ探検にでかける少女の話。
前半は「これから女の子の冒険譚が始まる」って雰囲気なのに、異星人と出会った後半からは一変。

少女は密航者で、その宇宙船には質量制限があって、
少女の分が重すぎて燃料が足りず、
かといって積荷は病気の兄の為の血清で、
積荷を捨てると兄が死んでしまう。
燃料が足りないままだと速度を落とせずに惑星の重力に引かれて、
宇宙船は積荷もろとも惑星の大気で燃え尽きてしまう。

それで少女は自ら宇宙船から出て宇宙空間で死ぬ事を選ぶ。

少女の決断プロセスが感動というか同情的な目で見てしまう。
無邪気に兄に会いに行こうとしただけなので……。

で、少女の犠牲により、兄を含めて惑星の人類が助かる。

気になったのは、
「(冷凍睡眠なしでは)あんな長い光年を生き延びられない!」
と片道だけでも冷凍睡眠が必要なほどの長い飛行後に、
少女が行方不明扱いとなって辺境の基地へ駆けつけた父親が、
行方不明となった直後のように怒っている姿。
娘が行方不明になったことを受け入れる、相応の時間が経ってるんじゃないの?
または、父親はすでに死んでるとか‥。
父親が娘の跡を追って、冷凍睡眠飛行してたの?
そのへんの描写が無いんで、ちょっと意味不明だった。
そもそも冷凍睡眠が必要なほど時間がかかる宇宙飛行の動機として、子どもの冒険心では弱いし。


第2話「グッドナイト・スウィートハーツ」は、宇宙遭難救助隊の男が主人公。
ある遭難艇に燃料を届けたことをきっかけに、長い冷凍睡眠前に恋人だった女と再会。
これも「自己犠牲」的ではあるけど、主人公は死なない。
ラストが意味不明だったけど、検索でやっとわかった。
つまり男は、自由を選んだ、と。
命がけの行動の直後、急に冷静になって計算高くその後の人生を変えるって展開がびっくり。


第3話「衝突」は、第1話と同じような異星人とのファーストコンタクトで、
人類を悪い種族と思い込んでいる超文明種との「衝突」。
本の半分くらいが第3話で、ちょっと冗長。
これも「犠牲」により、人類が救われる。
ただ、犠牲になる人物の描写があまり無いので、感情移入しにくく、感動というほどの読後感は無かった‥。
第1話は主人公の描写がメインだから、自然に感情移入するのと対照的。

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

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